【声明】子ども・子育て支援法改正案の廃案を求める声明

【声明】社会保障費の大幅削減と、医療保険の目的を逸脱する支援金、将来世代につけを回す「こども特例公債」など、国民負担増による子育て支援財源を盛り込んだ「子ども・子育て支援法改正案」の廃案を求める

2024年4月19日 中央社会保障推進協議会

岸田政権は2月16日、児童手当や育児休業給付の拡充などを盛り込んだ「子ども・子育て支援法」などの改正案を閣議決定し、4月2日の衆議院本会議で法案が審議入りし、4月18日の衆議院特別委員会で可決された。その財源は国と地方をあわせて年間3.6兆円規模の予算で、➀社会保障の歳出改革、②社会保険料に上乗せする「支援金制度」、③つなぎとして「こども特例公債」の発行が主な財源となっている。本来「子ども・子育て支援」を具体化する財源は全額公費で賄うものであり、子育て支援を理由にした新たな国民負担増は許されない。

歳出改革の中心は社会保障費の大幅削減である。全世代型社会保障改革の名のもとに、医療・介護など社会保障費の削減と国民負担増(患者負担増・利用料の引き上げ)がターゲットになっていることは、社会保障改革をめぐるこれまでの議論で明らかである。すでに国民健康保険や介護保険、後期高齢者医療保険の現状を見れば、相次ぐ保険料負担や窓口負担、利用料負担の引き上げにより、医療や介護が受けられない事態が広がっており、これ以上の社会保障費の削減と患者負担増に国民は耐えられない。

法案では、年金特別会計の子ども・子育て支援勘定と、労働保険特別会計の雇用勘定を統合し「子ども・子育て支援特別会計」を2025 年度に創設し、医療保険料に上乗せして徴収する「子ども・子育て支援金制度」を 2026 年度に創設するとしている。社会保険料に上乗せする「支援金制度」は、被用者保険の年収200万円で月額一人350 円、年収400万円で月額650円、年収800万円で月額1350円と試算され、国民健康保険は世帯によりその2倍以上の負担額になることが予測される。後期高齢者は年収250万円で月額550円、年収300万円で月額750円と試算され、支援金は年々引き上げられる。これは形を変えた新たな大増税に他ならない。

そもそも医療保険の保険料を少子化対策に使うことは、疾病・障害・老齢など健康リスク発生への備えである医療保険の目的を逸脱するものである。社会保険制度の原則を踏み外す「支援金制度」の導入は許されない。また、その支援金を保険者が拠出金として「こども金庫」に納付する財源確保は制度の妥当性を欠いたものである。つなぎとして「こども特例公債」を発行するとしているが、すでに日本の国債残高は 2023 年度末には 1068 兆円に達しており、将来世代につけを回すことに他ならない。

防衛費は際限なく増大させる一方で、社会保障費は「少子化対策」を口実に国民に負担増と給付削減を押し付けることは許されない。防衛費の前年比増分だけでも1.1兆円にのぼる。今こそ防衛費の拡大ではなく、社会保障費の拡充に踏み出すべきである。以上のことから、日本の社会保障制度の改善を目指す団体として、社会保障費の大幅削減と、社会保険の目的を逸脱する支援金、将来世代につけを回す「こども特例公債」など、国民負担増による子育て支援財源を盛り込んだ、「子ども・子育て支援法改正案」については廃案を求める立場を表明するものである。以上